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《神龍句集》

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发表于 2016-2-4 23:44 | 只看该作者 回帖奖励 |倒序浏览 |阅读模式
《神龍句集》


余幼时,庭中便有樱花一株,亭亭如盖也。绽时,恍若少女羞涩之红,泛于枝叶之间。俟其结子,往往玲珑剔透,光泽流转。吾食之既过,尝醉于树下,得云梦不知几何。负笈之后,方晓樱花乃东瀛国色,然初不在意。未虞,二十年后,结缘于俳句。感其吉光片羽,往往情怀匪浅,故学之不倦,预得之一二。神灵相佑,能得其有限之书册,览其无穷之魅力。遂提笔作之,成之一辑,恐见笑于大方之家。

春日の万燈をまき散らした空
千里の駒が馬蹄う幻れ氷
雪明り嫦娥のウサギが走る
詩箋を手に持った狐の妖
手紙に桜花の三五輪
一别の渡し場の吾が柳
秋の夜の銀漢一筋は太刀か
水月三千個もあれば化身
高山流水一曲天下の知音の琴始
珊瑚と去年今年赤い涙
小刺客は海胆を怒ひけり
目の縁の明き愁う古硯
白蛇や抜く殻冢原卜传の刀
生ビールより白蟻の湧き上る
廃電池の底の細流や春深し
獅子くぐり金の輪は太陽
尺八や一寸の竜が鳴く
寒蟬抜く蟬殻は黄金の屋
美人の掌心の痣や小豆生む
春光むかし屏風の金泥
松の実して若緑の佛髻頂はす
蟹殻を堅よく棚上げ休戦日
飛行機聞く筆跡の過き紙に
真珠一千万斗や春の雨
鱼腹のように白い天の川
地球儀一人残らず
北へ北へ手紙読ちけり雁の字
浅蜊の舌や秘め事
明日葉や昔の己の姿を見る
春に後身帰る
露の珠これはダイヤモンドですか
一時に蛙の子も垢が抜ける
かたつむりの後ろに銀河があります
枯山水は山水より寒い
ハエは仏前で合掌する
蟷螂は枯れても鋭いのこぎり
鮎の子や美髯を揺り動かす
寄居虫屋は故人か
春川やちりめんの皺が寄る
枯木も忘れ年輪
桃花や美人の映り春の水
どんなに涼しいわが影
玉柳や髪を湖辺に掻く
夜がスクリーンにメール忘れけり
球がポケットに入る夕陽かな
一つ一つのイチゴや心が通う
電池の内の電流や春深し
ポートワインをストローに吸う蚊か
君の成功を祈るハスキーかな
柳の枝や春鮒釣りする
掌の川よ生命線は無声
両鬢や鏡中は滝がかかる
満の月は厩出しの馬の目
玉肌から水が滑る雨の竹
春夢雲も雨も巫山戯る
氷柱は水晶簾の宮殿哉
吾掌の陰に梧桐葉青む
一人の影映る二人で行く
青蛙がしっとり上半身かな
螳螂は鋸引の枯枝かな
この空山は春天で還俗し
大空や空や空や空や空や
地平線は一筋スタートラインや
細螺や美人の髪の碧の簪
人も見ぬ蘭の花や空の谷
「蘭亭序」のその細き鼠の須
麦畑や黑蟻がタイルを這う
茶杓や竿は岸につっ軽舟
龍天に昇る上げ花火かな
竹の皮脱ぐ竜宮の柱立つ
冷奴を月世界こ食べるか
銀に輝く峰々は万馬の如し
聳える玉峰は中指の如し
赤蜻蛉や青蜻蛉の上に
光を収束するや秋扇開く
月の魂が水に浮かぶ
鳳凰の周りに百千鳥の集まり
米つぶは蟻の道へ移動中
黑蟻の列車に上る快哉
てのひらに錦を載せるプリズムかな
黄河や吾の血筋の中の龍
太陽は万物の電池の如し
長城は一筋の眠れる龍や
八百匹の馬江に湧く観潮かな
マッチの燃えさしあれの紅帽は
遅き日の長い川もみの如し
古松に万片淋し老龍鱗
玉川や吾が腰に帯をしめる
青や山へなり河へなり行く
大地に印をつける青の田
蟹のはさみが空へ伸す投降か
小豆粥に熱い涙や紅燭
風有り月有り不眠夜や
一瓢や川の水の流れが続く
退屈でしかたがない歳暮哉
環食や上帝の金の指輸
夏木立の昇天の気ありけり
竜が金鱗上の換え菊かな
有明や一瓢の春の夜の水
青竜は雲の峰に絡みつく
夕立や目下に千峰は小さい
玉人や春駒の左目に入る
蜂王宫に金屋の八百軒
玉波が逆巻く竜の涼しさよ
相撲草の葉に置く露相撲かな
栓ぬくよ蛇の舌まで酒浸し
秋高し飛行機の爆音を聞く
断橋に朦朧と影よ蛇衣
竜々の気の大きいよ雲の海
夜濯ぎの珠ゆっくりと浮かぶ
蕪村忌や陶淵明の後ろ姿
蕪村忌や濡れ影は陶淵明
花吹雪舟の旅人は窓開く
淡い墨を筆につける雲の峰
彩雲に竜と鳳凰化けたり
万松嶺鶴歩く見よ朧月
枯荷や万柄の戦音を聞く
名月や大珠が西湖に浮かぶ
地平線上に秒読み年行く
花嫁を迎える地虫穴を出づ
あじさいに乙女のししゅう針かな
敗荷がちょうあいをうしなうかな
梨を剥く我と彼の分離こころ
寒に入る不変の竹の節かな
神仙や川にたからぶね往来
竜鳴く春の川に浪が高く
あおくるみの核の中なる乙女心
焼入れ炉の中の劍にも七尺の魂かな
腕上の茱萸の一本山がくれ
枯れ芭蕉や古い手紙を焼く
息白し陰陽師化ものがたり
年玉やぽっぽの呱々の声ふだん
胡葱やひげなりになる朝の雨
柿青し腕白な少年めに
秋の七草やひふみよいむなや
二日灸松に緑針を出し
せっけん泡に月下美人を消した
石榴の笑み無数のルビーありかな
神飾る春日若宮おん祭
獅子舞の時に花の世界へ行く
馬酔木の花が揺らぐ玉杯を合わせる
地蔵や人間の欲は蟻地獄
罅入った塀は血筋震災忌
夢の中蝶の目を惹く室の花
首肯くの山々四方拝
芭蕉忌や青罗の髪の三千筋
一つ葉の万葉集の怠夢
風や長袖善く舞い龍田姫
拇印を瑪尼石に押す稽古始
王羲之の筆も酔い流觴
紅点も白点もしさん岩魚
井水に月を汲む玉瓢かな
夕映鯨は猛烈に噴火かな
姫始め上の句対下の句かな
コップ丸薬の瞬き蜃気楼
守宮の旗を損なうかな尾の搖れ
花の仮面奥三河花祭
彩雲間てんいむほう初縫
寄居虫に忘れ霜は小屋のいしばい
龍舌蘭の歯を得たるが如し
秋の山やせ俳人苦吟ちゅう
秋の田吾肘に黄金印
寒中水泳と玉龍の音
龍天に昇るや萬丈松
炎宙燃えるような网膜かな
八幡放生会や龍王拝
世の中一碧楼忌夢の中
始皇帝万歳兵馬俑立つ
白魚や月を追って移動する
日と月と一緒に明き青山河
千万の太陽が昇る光明へ
すぐオートバイの遠乗り秋の声
小寒や私の誕生日と青史
山河や藍で染める千代の春
ひと呼吸置く鰓のスイートピー
緑の夜塩素化銅溶液が転覆した
そよ玉龍の遠乗り天の川
鷲翼を広げると視界が開ける
お橋や大きな碗に置く太箸
高山祭の雲の道の帰る
涼しい月はドーナツ盤の如し
四方拝われは竜に従い
春湖はドーナツ盤の如し
折り目のアラビアンナイト夜長
花八つ手を揺る観音千つ手
上元の日天も地も人も円
朝雨に傘いらず粘れ春塵
秋日影や白雲観の白雲
二人静クロ—ン一人静
放生そうしゅと慈悲心鳥
ひが曲線を描く相対論
三歳や青い目一対読初
舞初め「霓裳羽衣」一曲
虚無僧のくちびるが荒れる大瑠璃
舌の根の乾かないうち虚子忌
嫁が君聖賢の道無形かな
苧環の花に金の糸を穿つ
回転翼をひらひら青き踏む
青葡萄ひと群の龍の目かな
秋宵や鼠の穴の猫の目
曙や茶しぶを抜く天の碗
つづけざまにくしゃみをする春雷
春の雷や龍は嚔が出る
雲に聳える太宗の碑や先帝祭
一筋の糸の蜘蛛は汗拭けり
一筋の蜘蛛の糸の露が光る
檸檬を一切れ入れる夜月かな
びのちから蕨のほうしのうを裂く
秋の峰や水に映る駱駝色
眠る山々も白きんじとうかな
羿や太陽の血が噴く弓始
屋根替弄玉の簫の音回り
夕に鶴嘴の先
余花や美人の唇に似て
荷池が見えて黄に変わる破れ傘
乾鮭が月下きらめく通しかな
医者がマスクをかける頬白鳴く
青麦の鋭い芒も光り剣
春月や美人の膝に置く琴
萍生ふ亀甲へ雨斜め
青田波巻いて田螺の泥噴かず
熱い食指も拇指も赤い羽根に
流感や匙の立ちて影法師
鞘中に不平を鳴らし蛇の舌
弦の桜花と玉指に泡が立つ
玉兎や大根の枕を当てて寝る
嫦娥に琴を習う玉兎かな
湖に枯木の映り舟が揺るぐ
満碗に朱を注ぐ秋の夕焼
風聴く琴の下に犬と兎
銀杏黄葉のような扇でした
暖か大志雲をしのぐ飛行機
鶴嘴に一つの礫は浅蜊かな
粥柱と沸海をかき回した
果報や歳徳神はもう来ている
歳徳神や門で待つのぞき穴
まばらな八弁の梅よ枯野
卵を生む鰆や金で象眼
片思い男と遊ぶ歌留多かな
ビー玉の殻に星飛ぶ夢の空
初恋や筆の先聞く春の雨
天涯や鏡にこきょう月の出
時計は一時中止し凍滝
壮麗なページを開ける初暦
如月や姿見の中の嫦娥
赤蜻蛉の目の光の美しき
雪男や雪を襟巻に舐める
髪に沿って頸をくだる雨水かな
静かな液アルコールランプ火事
壁の隅すいよの花小正月
お花の謎を解く蝶の思い
青白磁の酒器を持つ細螺かな
風光る瓢箪から駒千里
薄氷消ゆチューインガム一片
花の朝とくとくとして馬騎初
愁思を緋い鰓に見られ寒鯉
玻璃の春や我が目も透明になる
寒さが玉にしみる冬月かな
朝寝して血筋の緩やかな流れ
岩燕や巣の月満ちて切り岸
麗らかや左手に日と右手に月
寒の水へ行って帰る影法師
追い風や銀龍に乗り天の川
初雪やウェディングドレスかな
蓮の葉のかげに隠れる蓮の花
新顔や朱汗を流す蓮の花
潔や肌の雪がとけた無声
冬凪や暖かいてミルクティー
暖を取るてにミルクティー冬凪
春愁や猫を抱って話美人
石仏や影をも通す松の露
忘我のエデンに入る勿忘草
蟄居の日に青山河を描いて染め
一寸の松も未来の棟梁
宝船平清盛の雄姿
元日唐太宗華服着る
ワシントンの像を建てる四方拝
日永し泰山の頂に身を置き
春竜胆の一本動く天下
如月やしら拇印をおす闇の夜
如月や竜の顎の下の珠
銭塘江の潮の立ちて旗かな
鴛鴦や彼此の名を呼ぶ水しぶき
枯園に羽を与える猶予の人
指の甲の隙の泥小春も有り
名月や母の膝に物語を聴く
夢波や風にくうせん鶴の嘴
夏川に白嘴の映りや黒鴨
夏月や鴨を見ずただ黄の嘴
岩鼻や宋画を掛ける万軸
凍手や一対か枯葉が紫
万籟が一斉に歌会始
鶯や管楽器で伴奏する
ある青葉のみゃくの木のしんの地図
タバコを消し忘れ秋夕焼かな
蝗や草を擦って音を発する
虫売の隙から微光がさすかな
開戦日眸子銃眼のごとし
ごきぶりの卵が散る薬瓶かな
夕べ火鉢に炭をつぐ鴉の巣
琥珀の光沢の古きよ名月
酔顔や上元の日の灯籠
海女の子宮深し真珠の門
あの赤蜻蛉も高しヘリコプター
小悪魔を海へ逃がす飯蛸かな
氷柱に水銀光り寒暖計
名古屋の半分の寒の入り夜月
美人や壁の琴と話す春暁
麗日や点睛を欠く初山河
弟子の袈裟に映る石仏の影
不屈はほっそりした姿青竹
朝寝せり『紅楼夢』を枕として
一片の唇の朱梅早し
薄氷が張ってその小池の窓
和風や桃色現す恋の浪
青塚に蕨食べれり月蛹
この麗日は彩蛹の如し
出日彩蛹の如し
ぶらんこに乗れり残花又一輪
掌の中に動かず秋の蟬
冴え冴えした命毛も凍結かな
香水を溶かして春の静脈
枝先でゆるゆるとくつろぐ嫩芽
秋時雨は無線信号を消した
探梅や高士にも美人も会った
花吹雪やむかしの人今何処
露の精霊が一輪草舞う
青蜜柑に多くの弦月が有る
宝剣は春塵で覆われた
梟や目薬をさす露の珠
湖龍の筆もこうしょくだ
元日やのぎ隠さず龍の角
筆始め俳句が紙上に浮かぶ
ふしぎ狐は灯籠を提げていく
南瓜や灯籠の明け南の国
賀状書くただ一の福字が好い
網の目から逃れり春星かな
柳絮飛ぶ低空へ白蛾かな
春日影やあちこち転がる目玉
宵闇の果ての隕石に近づく
お筍や孫悟空の如意棒
筍や千代に八千代の龍孫
玉葱や八つ重の水晶宮
居待月常盤の指の腹の紋
青竹や気節を持つ濁世山
片栗の紫外線にある花の日
咲かす白桃は橋の袂に伸び
夢筆の命毛と生身魂来る
歩一歩と影に近づく秋遍路
こ複眼に見る桃源の遠足
招かざるかたつむり温め酒
残る蚊のからだにわたしの血が有る
ろうそく明らかに秋の蚊帳まれに
眼じりの皺を拡げ蓮枯るる
秋虹を漫ろ歩きする仙女
色変へぬ松や忘れ美少年
寒声や蛇口をひねって開ける
朝寒し歯間から薄荷味かな
ひと筋のお磁針や蝌蚪が尾をふる
陶磁に朦朧と蘆角が浮かぶ
三日月やかの耳たぶに玉の汗
好色の来て色鳥隠れけり
四つ角に煙吐く汽車夕冷え
凍滝一時万物静止中
凍滝や何無情崖の涙
花吹雪鼠の裸おどりの夜
白月に返すべし鰯の罐
小寒や美味に飽くカステラ国
初恋や長髪の春瀑の如し
花埃空山へお布施を上げる
秋気澄む流行歌耳を透く
崖の間に白糸吐く蚕瀑布
瓜坊酔って玉帯が風に靡く
元帥たるもの肥えた牛蛙
卯の花や水溶す塩の跡
春光や水に詞を読む玉の城
行水にみを隠す白滝かな
暮春お橋からへき水流れる
静かな目に田舎を揺る小屋の秋
鳥消えて羽音が遠い朝曇り
露の珠に牛の映り草青む
牛乳や白色の冴えに耽溺
ビ—ナスに手の美が見えて髢草
初冬の雨を思い出せないんだ
夏の夜へ蕊が風で動く煙火
麗日の口紅を点す天女来
天道虫身に星辰序列あり
近き鈴の自転車やこうてんし
青空に彫り弓を掛ける秋の虹
帆の風を得たるが如し秋潮
秋日和衝天一鶴気勢高し
秋宵君の心の月の如し
二三角露馬遠の秋山
貴人忘れ物紫式部かな
夜光の珠が湧き出す海月徐徐に
紅梅や雪抱いて靨の縁に
人魚姫の鱗が光る花霞
初句会二十四橋玉人立つ
初句会座中一気呵成三千句
その髀肉の嘆を発して馬肥ゆる
忘れ雪むかでの足が軽いか
馬追が百代過客重なりぬ
春潮の起伏の声洗濯機
良夜かな到る処に真珠あり
朝顔に近づいて吾近視かな
桐一葉石仏の手に横になる
行く秋の木の先は雲を指す
小悪魔の目をむいて怒る枝豆
枝豆の莢むいて小悪魔怒る
乾鮭や十字架を負う炭の火
金柑や地蔵の手の中の宝珠
やや寒し徽墨を擦る徐徐に徐徐に
九月尽十月の第1ページに
十六夜や玉の小琴の弦の波
新玉の竜を描いて日の瞳
新年や巨竜を描く日の瞳
新年や天竜を放す金籠
壮麗な絵巻をひろげる初山河
麗か一筋の五彩の命毛
大初日一面の太鼓の如し
緑ひげ隠元豆の棚に竜
玄奘の乗馬が昇る龍天
無花果は腹が張って小妊婦かな
蓮華舞う緑衣を着けた天女
朧月回って菩薩荘厳す
鐘供養夜の松の声より広く
花杏仏子の心をうごかす
薄氷の浄身の置きどころがない
薄氷の音や観音の目に開く
鶯菜葉の声々又雨か
遅桜天女を長いこと待った
暮の春や早く来いよ夢中人
花辛夷や月下老人の筆筒
殿堂に百千鶴来て集まる
夜食竜が生臭い涎を流して
昔からの美少年に逢う春社
新しい潤福の画へ春めく
朧夜や文殊は獅子に乗って来た
観音の目にちりを拭う秋の水
雲峰や掌を合わせて神様だ
鳥雲に浮世は手掌の鉄鉢
玉顔を半分に遮る団扇
新年や新月を踏む馬蹄形
片恋の小春愁や目で知らせる
夜月回り舞台を踏む初蕨
窓紙を細かく破る吹雪月
水仙の坐す波中錦鯉
春立つや壁紙の換え四面花
海棠や淡い色の月香をたく
黄葉や深く呼吸する秋風
竹のすだれを巻き上げる初笑い
引鶴の雲のきれめから日がさす
一枝の玉が傾く雪花落つ
点滴が一滴落ちて雨かな
歯の跡の近づくたにしに流りけり
雁の近 づく寒月に帰りけり
観桜や乙女の頬が真っ赤だ
蜂房に唸る蜂刺毀れけり
飛行機の砕片が浮く花杏
白乳房の起伏を見て朝寝かな
春一番酒屋看板落花がある
霜柱樹々は屈折した絹糸
茶卵や熱い殻をむく蝉声
啓蟄の虫の音の美しい夜
山風や樹のすすり泣く落霜紅
寂しさや夕陽が沈む枯柳
上弦の月が交じって夜の歯朶かな
行春や電波にのせて花の音
青空に月井に影にお水取
土星の輪を仰ぎ見て夜空澄む
行く秋や国が傾ぐ忘れ金
仰向いて樫花の小さな子供
木枯らしや鉄のよろいをまだ着てる
牡丹散って幻の国が傾いた
晩春や風雨落花多へ庭を掃く
露の世降り幻の国へ立つ
蚯蚓鳴く指節しくしく痛いよぅ
明日くる李白の髪が蓬かな
病葉や煙草を吸いすぎての肺
十六夜の巻は散乱して月光
ぬれた手で樹皮に触れて雨月かな
止まり目に入って大空の皸
若水に花びらのような唇
連翹や牛に掛けて銅の鈴
小林や歩度を緩めて鷽の声
軒下の雨滴か夢の秋寒し
若駒の行けども凉し草の露
払暁や花心が裂けて春の霜
細螺ただ時間をつぶす水の国
亀鳴くは酸素ボンベの栓をぬく
鼓虫は時計のねじを巻く徐々に
錫杖を持って待宵の行脚僧
熊吼える闇の中ども樹々を裂く
初富士や縹渺たる小舟横に
梅ひらく美人の横に腰かける
青の袈裟を掛けるや春の連山
白詰草は蝶の臨時の飛行場
誘蛾灯仏の慈悲の目が閉じる
蜉蝣生は今日しかし死は今日なり
鮫人の涙が凝って夜の珠明り
清水のむ刃や寒し玉の峰
月や梅は鏡を見て薄化粧
鶯や竹には二三羽を逐う
泉声や聞こえてくる空の山
露な肌より涼し月の出る頃
夜の故人を訪ねて八重の雪国
影法師や碁盤に寄る夜半の秋
春崩れ花が飛び散って風も朱
月映る春瀬の跡は馬蹄かな
春の夜の夢や猫なで声を出し
花見人の善さは花比ではない
綱渡り生涯を過ぎて糸遊
朧夜に蝉翼薄し樹の肌着
清明や昇天の気あり龍山
春天女は履を穿つ芝青む
あち寒露を吐いて天の食かな
北窓を塞ぐ水差しの耳熱い
玉帯に傾倒しているや銀河
歯の動きこそこそ話麦青む
不精して瞳を凝らす春の昼
春の渚の船が傾ぐ鳥の羽
千鳥足で歩いて帰る大雪
両輪の花の顔初鏡
月を眸子に溶かす
引鴨や左右に揺れる歩き方
蓮の根も露にする春着かな
東風がしずまる木をきちんと正した
さくら咲き人間も何も忘れて
青山河龍鱗に覆われている
猿酒や我を忘れて青い月
玉石の温度が上がる寒晒
河童の皿を洗う月や田螺鳴く
濁り酒ひび日と月ほどの違い
青筋を立てる大地に木の根明く
春立つやまがもは岸へ泳ぎ着く
ぼうこくの音が瀰漫する吹初
白酒の痕を見て乱れたころも
愛鳥週間流れ光陰羽のごとし
遅月や双峰に置くうちわ差し
葦枯れる前の座席で舟をこぐ
旧正や爆竹の音を続けた
梅干して一つ顔に皺が寄る
朝寒や荒れた庭にも輝く
枯蔓の欲が裸体につきまとう
懐の書に玉巻く芭蕉なみ
白昼に城市を消した霾ぐもり
小天地は無情なものだ紙風船
青簾に月が映える影法師
あの色はつるぎに近い秋の川
氷山の一角の突き立つ冷海
光陰矢への思いやり楪や
涼しさを感じられる小種浸す
門の外に細雨がやむ青山河
後遺症が残った患者余寒かな
自転車の轍に入って秋近し
寒卵にひびが入って朝日差す
旧へ戻る半額切符や初旅
たいざから彼此が無に帰し夜寒
雪柳散る何処も同じ真珠径
人の波流れのまにまに萍
星月夜水晶占いよく当たる
一夜君と語り明かす大地凍つ
緑藻の海が傾く緑夜々
夢現のような胡蝶訳者かな
薄翅孵蝣の動き出す声帯
びんが倒れたので起こす秋時雨
除夜の鐘が止むまで待つ八重花火
正月の凧が高く飛ぶ白鳥
峰寒し秋の歯並びがきれいだ
凍滝や何時しか凝り氷馬
かるがると舌尖の滑る福茶かな
月のない淋しい夜道囀れり
山帰来の鉄騎が势ぞろいした
青葉や葉声前後が呼応して
秋蠅へ残兵が流れる他山
桜田門外の変を聞いて囲炉裏
若虫ぶるぶる震える鍬始
地下鉄が急に停止した茎立ち
青桃やにきびをつぶす指の跡
鵙猛る急に視界が開くように
開戦日封建制度が崩れる
慈姑掘り開幕のベルが鳴っている
捨て猫の雨に濡れると寒戻り
月が残る銭塘江に観潮
空っ風その紙飛行機の行方かな
月が満ちる富士山頂初明り
足の振り鴨川踊時差ぼけや
引っ切り無しに公魚が通る銀箔
かぶとむし角と淋しい青みどろ
左遷して何処へ行くか今朝の秋
牡蠣のからにしんしゃを置いて歌姫
枝を鳴らさず国栖奏のごときかな
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